「ゼミの武蔵」のグローバル教育
1年次から全学生がゼミに所属、そのゼミも毎年 400以上開講するなど、「ゼミの武蔵」として少人数の緻密な教育体制が認知されている武蔵大学ですが、近年ではさらにグローバル教育への注力も進めています。その象徴ともいえるのが、 2015年度から経済学部でスタートした「ロンドン大学と武蔵大学とのパラレル・ディグリー・プログラム」(PDP)です。
PDPとは武蔵大学に通いながら、すべての試験に合格すれば、ロンドン大学と武蔵大学の 2つの大学の学位が取得できるプログラムです。海外の大学の学位が取得できる制度としては「ダブルディグリー」や「ジョイントディグリー」といった制度もありますが、これらの制度との大きな違いは、海外留学を通して連携する大学間で単位を認め合うのではなく、留学をしなくても、武蔵大学のキャンパスでロンドン大学のプログラムを学ぶことができるという点です。
「ロンドン大学といえば、世界の大学ランキングでも上位に入る名門大学です。 PDPはすべての授業が英語で行われるので、授業の内容をしっかりと理解し、その内容を自分のものとするためには、毎日数時間の予習復習が欠かせません。もちろんロンドン大学の卒業試験に合格することは、並大抵の努力ではかなわないものです。しかしながら 2019年の夏には、見事に PDP一期生からロンドン大学の学位取得者が誕生しました。 PDPに参加した学生達は皆、語学力や知識だけでなく、仲間たちと切磋琢磨した経験や身につけた幅広い視野を通して、一人ひとりが確固たる目標や学びのテーマを見出すことができたようです」と山㟢哲哉学長は語ります。
2017年度から3学部に学びを拡充
経済学部で PDPがスタートした2年後、2017年度からは人文学部の「グローバル・スタディーズコース( GSC)」、社会学部の「グローバル・データサイエンスコース(GDS)」が開始されました。
国家の枠組みを越えたグローバルな課題を解決できる人材をめざす人文学部の GSCは、高度な語学力と世界の文化や課題への理解を深めるコース。英語プログラムでは、「1年次の第2クオーターには8週間の海外集中英語研修で英語漬けの日々を送り、飛躍的に英語力を伸ばします。1年間で TOEICスコアを 100点以上アップする学生もいます。現在 3年生になった一期生の半数近くが 700点越えを果たし、800点を越える学生も少なくありません」と山㟢学長が語る通り、特訓プログラムや正課外の個人指導などで、集中的に語学力を高める仕組みが特徴。また、 Global Relations<国際関係>、 GlobalLiterature<グローバル文学>、 Global Japanese Studies<グローバル日本文化>の3分野を通して、語学力だけでなく、幅広い教養と視点を身につけていきます。
一方、社会学部の GDSは、 1年次に実施される 6週間の海外英語研修に加え、近年、企業や行政の活動で高い注目を集めているデータサイエンスのスキルを習得するコースです。2~3年次には4週間以上の協定留学や学生が自ら企画した課題に取り組み、国際ボランティアや企業インターンシップに参加する「GDS実践」を実施。「学生はオーストラリア、フィリピン、ポーランドなど世界各地でのボランティア活動や企業インターンシップを経験します。大学で学んだ知識や技術を実践の場で活用することで、実践的応用力や学んだ知識の定着が図られます」と山㟢学長は語ります。社会学部に必要とされる深い社会学的洞察力と柔軟な発想力に、未来を担う重要なテクノロジーであるデータサイエンスと国外へと活躍の場を広げるための語学力を重ねることで、世界の将来を担うグローバル人材の素養が培われます。
武蔵大学では、学園創立 100周年となる 2022年 4月に、国際教養学部(仮称)の新設を構想しています。 2015年度からスタートし、現在、展開されているグローバル人材育成のための発展的な取り組みを更に推進していくことが狙いで、その中心を担う存在となるのがこの国際系の新学部。そして、その学習内容の軸となるのが「リベラルアーツ&サイエンス」です。人文社会科学・自然科学を広く含む総合科目、専門科目、外国語科目を英語で学ぶことを目指すこの新設学部の誕生により、「ゼミの武蔵」という言葉で体現されていた少人数の緻密で丁寧な学習環境を基盤として実施されてきた武蔵大学のグローバル教育は、より一層のレベルアップが図られることになるでしょう。
ゼミの武蔵のグローバル教育を支える仕組み
いつものキャンパスで学ぶ
世界基準の経済・経営学
――PDPの仕組み
履修系統図
「ロンドン大学と武蔵大学とのパラレル・ディグリー・プログラム」(PDP)は経済学部の入学生 30名程度を対象とし、語学や数学の成績などで選考を行います。
選考を通過して受講を認められた学生はまず、 1年次の 4~ 7月の約 3か月間、授業や海外英語研修で英語力を鍛え、ケンブリッジ大学英語検定機構などが運営する英語検定試験である「 IELTS」を受験します。ここでスコア 5.5以上を取得できた学生は、 1年次の 9月からロンドン大学の IFP(基礎教育プログラム)科目を 4科目履修し、 IFPの期末試験に合格すると、 2年次の 9月から BSc(専門教育プログラム)を履修することが可能となります。そして 3年間で 12科目を学び、毎年の試験に合格すれば、ロンドン大学の経済経営学士号を取得できるという仕組みです。なお、これらの科目は通常の授業と同様に、武蔵大学のキャンパス内で武蔵大学の教員によって英語で講義されます。ただし試験問題の出題や採点、評価はロンドン大学とロンドン・スクール・オブ・エコノミクスが担当します。
「学生にとっても教員にとっても、高い水準を求められる厳しいプログラムです。ただし学んだことの価値は世界に通じる本物です」と語るのは PDP教育センター長の鈴木唯教授。 2019年度には、 PDPの最初の卒業生となる一期生から、ロンドン大学の学位取得者が誕生。しかもそのうちのひとりは「First Class Honours」(トップクラスの試験評価獲得者)を獲得するという、想像以上のスタートをきることができたという。
「私が以前教鞭を執っていたアメリカをはじめとした海外の大学生に比べ、日本の大学生は勉強にかける時間が短い。世界で活躍することを目指す上で、この現状はどうしてもネックとなってきます。 PDPの取り組みは、この日本の大学教育の課題を打開する、価値のある取り組みとなるはずです」(鈴木教授)
なお、 PDPを受講する学生には成績に応じて、ロンドン大学の登録や英語研修にかかる費用について奨学金によるサポートも用意されています。
First Class Honoursの評価獲得
1期生のため、前例のない中での授業や試験対策は大変でしたが、ともに勉強する友達の存在は心の支えとなってくれました。苦労もありましたが、それを努力で乗り越えることができて、良かったです。武蔵大学とロンドン大学、 2つの学位を取得できたことに加え、 First Class Honours※2の評価を頂けたことも、誇りに思っています。
今後は、 PDPで学んだ知識を応用して、多くの企業商品のマーケティングで活躍したいです。
充実した環境で学ぶことができた
授業では議論をすることも多く、就職活動の面接やグループディスカッションの際に、自分の意見を論理的に伝えるのに役立ちました。 PDPを通じて得られた新しいことにも積極的に挑戦するマインドは、就職後も役立つと考えています。卒業後は PDPでの経験を活かして、自ら社会に影響を与えられる仕事に携わっていきたいです。
IFP Economicsで世界第2位の成績を獲得!
※ 2: First Class Honours:合格者は試験のスコアによってFirst(スコア70-100)、Upper Second(60-69)、Lower Second(50-59)、third(40-49)に分類される。スコア 40未満はfail(不合格)となる。First Class Honoursは最も優秀な成績。
※ 3:ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス
海外留学協定校に !!
PDP は留学せずともロンドン大学の学士号が取れることが 1 つのメリットですが、留学もできます。2019 年度より LSE と海外留学協定を結んだため、条件を満たせば、LSE The General Course への留学が可能になりました。また、短期であれば 3 週間留学の Summer School もあります。LSE は経済学の分野で世界でもトップクラスであり、LSE に留学できる日本の大学はごく僅かです。世界中から集まった優秀な学生と一緒に学べる良い機会になるでしょう。