夢考房からプロジェクト活動が始動
金沢工業大学では学部学科の授業に加えて、数多くの課外活動(正課外の学習プログラム)を用意しています。これは遡ると 1965年の開学時の旗標のひとつとして掲げている『高邁な人間形成』、つまりは技術や知識の習得の重要性よりもまず先に人間形成にポイントを置くという、教育方針に基づいた取り組みとなっています。これらの課外活動は現在、『KITオナーズプログラム』として「学科プロジェクト」「夢考房プロジェクト」「学友会に関するプログラム」の3つに区分され設置されています。そしてこの『KITオナーズプログラム』が誕生するきっかけとなったのが、そのひとつである「夢考房プロジェクト」です。
「夢考房 26」は、1993年に学生がアイデアを具現化できるための場所・道具・材料・知識を用意し、所属学科に関係なくいつでも自由なものづくりが楽しめる空間として建設されました。現在では多くの理工系大学等に自由に活用できるアトリエ(工房)が存在しますが、全国的な先駆けとなったのがこの「夢考房」です。そしてこの「夢考房 26」の建設をきっかけとして、金沢工業大学ではプロジェクト活動を組織的に支援する体制が整い、さらに 1998年にはプロジェクト活動の拠点として「夢考房 41」が完成。「夢考房プロジェクト」は大学の正課外の学習プログラムとして存在感を高め、学生からの人気を集めるだけでなく、社会的にも高い評価を得ることになっていきます。
2つの夢考房が「新夢考房」として 2017 年4 月から統合された現在、「夢考房プロジェクト」はソーラーカー、エコラン、人力飛行機、ロボット開発、義手研究開発など幅広い領域に及ぶ計 13のプログラムで構成されています。スケジュールから予算管理までをすべて学生達の手で行う実践的な内容は、「学科プロジェクト」と同様に『KITオナーズプログラム』に共通する大きな特徴となっています。
学生一人ひとりのための教育
この「夢考房プロジェクト」に加えて『KITオナーズプログラム』の軸となるのが、「学科プロジェクト」です。「夢考房プロジェクト」との違いは、多くのプロジェクトが学問領域に合わせて学科ごとに区分されていること。現在は約 40のプロジェクトが進行中で、小学生~中学生向けの心理学ワークショップを行う「サイコロジェクト」、納豆菌を活用して農地の土壌改良を行い野菜の品質を高める「ねばーるプロジェクト」、大学周辺の自治会と連携して行う「防災・減災プロジェクトSoRA」など、バラエティ豊かに展開。なお『KITオナーズプログラム』には、参加するために必要な資格や試験が存在しない一方で、正課外であることから単位認定等もなく、学生はあくまで自分自身の力を伸ばすことを目的に参加しています。
このように金沢工業大学では、「正課では学力(基礎力と専門力)を、正課外のプロジェクトでは人間力(社会で活躍することのできる力)を高め、学生の総合力(学力×人間力)育成をめざす」という方針のもと、独自性の高い「正課×正課外」の学習スタイルを実現しています。そして正課外では特に実践力の習得にポイントを置いていますが、この背景には 2011年に金沢工業大学が日本の大学として初めて加盟した工学教育の世界標準である「CDIOイニシアチブ」が存在します。
2000年に米国・マサチューセッツ工科大学等を中心につくられた「CDIOイニシアチブ」はConceive(考え出す)、Design(設計する)、Implement(実行する)、Operate(操作・運用する)という、未来の工学教育で重視すべきポイントをまとめたもので、卒業生に求める能力をまとめた「CDIOシラバス」と、工学教育のフレームワークを示した「 CDIOスタンダード」という2つに基づいて設定されています。加盟の翌年となる 2012年度より金沢工業大学では、プロジェクトデザイン教育を中心としたカリキュラムの刷新を進行。その中で、Conceive(考え出す)と Design(設計する)の力を正課で、Implement(実行する)、Operate(操作・運用する)の力を正課外のプロジェクトで育むという学習スタイルへの移行を実現したのです。
そして今後、金沢工業大学がめざすのは、学生 6000人に対して、 6000通りのカリキュラムが実現できるような、より柔軟性が高く、学生の個性にマッチングする教育の在り方です。「正課×正課外」という独自の学習スタイルを構築した『 KITオナーズプログラム』は、一人ひとりの力をさらに伸ばす教育の柱のひとつとして、これからも世界が求める力を持った人材の育成に貢献していくことでしょう。
KITオナーズプログラムや
リーダーシップアワード生講座を活用